目次
1 「論文」試験の性質
2 「小論文」に求められる「必要条件」(最低限度の条件)
1 「論文試験」の「対策・準備」から「実戦・書く」までの全体の流れ
2 「合格答案」を書くために
3 「小論文」を書くために求められる「学力」
4 「論文」における「問題」と「課題」のちがい
1 一般的な段落構成
2 結論先行型になれよう
1 文体を統一しよう
2 文章作成の10の鉄則
3 原稿用紙の使い方
1 時間配分を考えよう
2 設問をじっくり分析しよう
3 メモを書こう
4 「自問自答」する
5 プロットを作成しよう
6 執筆時に気をつけること
7 他人の目で冷静に推敲(すいこう)しよう
1 「小論文」問題には、さまざまな「型」がある
2 作文と論文の違い
3 内容から見た「小論文」問題の「型」とその評価観点
4 形式から見た「小論文」問題の「型」とその対策
1 作文型小論文で「何を」書いたらよいか?
2 作文型小論文を「どう」書いたらよいか?
〜「過去の自分」中心型〜
3 作文型小論文を「どう」書いたらよいか?
〜「未来の自分」中心型〜
1 「論文型小論文」で「何を」書いたらよいか?
2 論文型小論文を「どう」書いたらよいか?
〜テーマ型〜
3 論文型小論文を「どう」書いたらよいか?
〜資料読みとり型〜
4 論文型小論文の型で大事なこと
※ 本講座では、試験問題として課される「小論文」・「作文」をまとめて「小論文」と表現する。
1「論文」試験の性質
@ 学者等が書く研究成果としての学術論文と、答案の「小論文」・「作文」とは違う。
A 入試問題としての「小論文」は、「自己表現力」を試すもの。
B 入試問題としての「小論文」は、受験者が、正確な知識を豊富にもち、「自己表現」にそれらの「知識を活用する力」を持っているかどうかを試すもの。
C 「小論文」問題の「型」と「書く手順」を知り、「手順通り」に文を展開することができれば、文章を書くのが苦手な人でも優れた小論文を書くことは難しくない。
2 「小論文」に求められる「必要条件」(最低限度の条件)
「論文」とは、対立する意見がある「課題」(「論点」)について
@ 自分の主張(結論) と
A 自分の主張(結論)が正しいという根拠
を書く文章である。この2つの条件を満たさない「文章」は「論文」ではない。
たとえば、「自分は○○と考える。その理由は 〜である。」
「自分は○○と考える。その具体例は 〜である。」と書く文章が論文。
1「論文試験」の「対策・準備」から「実戦・書く」までの全体の流れ
「彼を知り、己を知れば、百戦危うからず」(孫子の兵法)
「論文」試験には、
彼(敵)を知り 試験の「型」と「題意」を知り、
己を知れば その「型」と「題意」に関しての自分の「経験・知識」を
百戦危うからず 表現する「文章力」があれば対応できる。
2「合格答案」を書くために
(1) 「良い答案」の条件
@ 試験官の要求(「題意」)にきちんと応えた答案。
A 「課題設定」が的確で、それに対する「結論」が明確な答案(次の(3)に再掲)。
B 「自分」という人柄がよく伝わる答案。
C 自分の意見を論理的に筋道を立てて、明確に表現した答案。
D 読みやすくて人を引きつける答案。
E 常識をふまえつつ、個性的な内容(独自の視点)が書かれている答案(次の(3)に再掲)。
(2) 一般的な評価基準
@ 課題の要求を的確につかみ、正しく答えた内容(論点、キーワード)を書いている。
A 「何を主張したいのか(テーマ)」がはっきりしている。
B 自分の主張を筋道立てて述べている(論理矛盾は減点されることが多い)。
a なぜ、そう考えるのか。(「小論文」に前書きはいらない。)
b たとえば、具体的にどういうことなのか。
c 背後に何があるのか。
の3項目のうち、最低限1項目が展開されていること。
C 正しい日本語を使用し、原稿用紙の使い方や表記に誤りがない。 など
(3) 「小論文」の優劣が決まるポイント(合格答案の条件)
@ 「論点」に対して、Yes か No かが明確であること
a Yes か No かの結論がはっきり下されている。
b Yes か No かの理由(根拠)に説得力がある。
(これら2つが「優秀な答案」の最低条件)
A 「独自の視点」でとらえている … +アルファ(α)のポイント
より高度なレベルの試験になると、「受験者独自の視点でとらえているか」という評価基準がある。これは「問題」を「自分との関わり」でとらえているかを読み取る方法である。別の表現をすれば、「他の人が気づかないような深みにまで踏み込んで判断を下している」ことが、他の人との違いを明らかにするプラスアルファのポイントになる。
3「小論文」を書くために求められる「学力」
(1) 題意をつかむ力
@ 「小論文」も、試験である限り、出題者が求めている「題意」がある。
A 「題意」から外れた「小論文」は0点を覚悟せよ。
B 「社会問題」などの様々な「論点」についての基礎知識を正確に身につける学習が大切である。
C 社会的な「論点」に対する「自分の考え」を、あらゆる教科の知識を使って整理したり、説明(表現)できるようにトレーニングする。
(2) 課題設定力
@ 「論文」対策に必要なのは、「課題設定力」を鍛えること。
論文問題は、普段のテストと違い、何が問題なのかも示されていないことがある。求められている答えにも「正解」がいくつもある場合が多い。
そのようなテストの場合は、与えられた情報から、問題点を発見し、その問題を解決するためにはどんなことをしなければならないのか、何が必要かを指摘する力が試される。
「小論文」において必要な「課題設定力」とは、与えられた「問題文・課題文」の中から、「社会問題」を探し出し、それに対応する「論点」を指摘・焦点化する「学力」である。
「小論文」では、この「課題設定力」を、第一関門(評価基準)に設定していることが多い。
ここで設定した「課題」が、「小論文」上では、後に説明する「引用」や「問題提起」として文章化されることになる。
(3) 表現する力
@ 専門的な知識を基にした「表現力」を高めること。
あらゆる「教科」で学んだこと(専門用語・キーワード)を、常に自分の言葉として活用できるまで練習しておくことが大切。
別の言い方をすれば、「教科の知識」で、自分の体験や経験を説明・文章化できるように、ふだんからトレーニングしておくことが大切である。
4「論文」における「問題」と「課題」のちがい
一般的に説明すれば、「社会問題」などに対して、その解決策や方法論などの「課題」が発見される。
その「課題」についての意見の対立が「論点」である。「論文」は、その「論点」に対する「自分の意見」を表明する文章である。
1 一般的な段落構成
@ 「序論」→「本論」→「結論」(「起・承・転・結」も同じ)
一般的には、結論を最後に配置する文章が多い。しかし、限られた時間内の「小論文」には、不利な点が多い。たとえば、結論を最後にすると、不明確になりやすい。
A 「序論」→「本論」→「結論」という順序で書く場合も、「序論」に結論めいたことを書いておく方が、書きやすく、読みやすい。イメージとしては下のようになるであろう。
序論に ・・・ 結論の予告を書く (○○は、△△ではないか?)
本論に ・・・ 根拠を書く (こんな理由や具体例があるぞ!)
結論に ・・・ 結論の確認を書く (ほら、やっぱり○○は、△△だ。)
2 結論先行型になれよう
(1) 結論先行型の基本形
「結論先行型の小論文」とは、結論を文章の前の方に置く書き方の論文のこと。
○○は△△である(と考える)。 ・・・・(結論)
なぜなら □□が▽▽だからである。 ・・・・(理由)
たとえば ◎◎はその例である。 ・・・・(具体例)
(2) 結論先行型の特徴
@ 時間の限られた場面で小論文を書く場合、結論先行型の文章は非常に効果的である。特に、結論を先に書いておくと、途中で時間切れになっても論文としての形はできている。
A 結論が最初に書いてあると、読む側は初めから「ああ、筆者は○○と言いたいのだな」とわかる。
読み手として読みやすい論文になる。 → 好印象点が獲得できる!?
B とても書きやすく、スピードアップできる。それは、考える順と、書く順序が同じだからだ。たとえば、
自問自答するときは、次のような順序で進めることになる。
テーマは何にするか ・・・ 「○○は△△だ」にしよう。 (結論)
なぜこれは正しいのか ・・・ □□が▽▽だからである。 (理由)
具体的には ・・・ たとえば ◎◎はその例である。(具体例)
C 数学の幾何問題の「仮定・結論・証明」パターンと同じなので、途中で結論を変更できない特徴がある。したがって、プロットの変更は絶対にできないことを忘れないこと。
(3) 結論先行型の段落構成・実際例
@ 引用 (設問から、与えられている事実・意見)
A 問題提示 (〜は…だろうか?)
B 結論 (私は○○と考える)
C 根拠(理由) (なぜなら〜)
D 具体例 (例えば…)
1 文体を統一しよう
@ 文を書く際には、文体を統一して表記しなければならない。
A 論文は、常体(「だ」・「である」)を使って書くのが一般的である。
常体:文末を「だ」・「である」で表す文体のこと。口語文体。
敬体:文末を「です」・「ます」のていねいの意を表す語を使う文体のこと。
2 文章作成の10の鉄則
@ 一文はできるだけ短く、一文一義で
一文一義とは、「一つの文で一つのことを言う」こと。短い文の積み重ねで文章を組み立てる。それが、わかりやすい文章への第一歩である。
A 接続助詞の「が」は、なるべく使わない
一文が長くなるときには、必ずと言っていいほど、接続助詞の「が」が現れる。接続助詞の「が」は、肯定的な意味にでも、否定的な意味にでも、様々な文をつなげてしまう性質を持っている。そのため、接続助詞の「が」を使うと、意味のつかみにくい文になりやすい。下手な文章ほど「が」を使うことが多い。「が」は、使わないようにすることが賢明。
B 主語をなるべく明確に書きこむ
主語がない文は、書き手の主体がない文である。このような「主語なし文」は、自分と他人の区別をあいまいなままにしているときに生まれることが多い。
C 文と文をつなげる語句をなるべく使う
接続詞など、文と文をつなげる語句を適切に使いこなそう。これらの語句を使用することによって、文と文の関係が明確になり、読み手に自分の主張が伝わりやすくなる。
D 文末はできるだけ簡潔に
文末はなるべく端的にいい切るようにすること。意識的に文末を簡潔にし、言いたいことを明確に表すべきである。「論文型小論文」では、特に重要である。
E 同じ概念は、同じ語で表し続ける
概念(がいねん)は、あるものについて多くの人が共通に持っている知識のまとまりである。
例えば、「犬」の概念は、「四本足で、全身が毛におおわれた、ワンワンと吠え、人なつっこい動物」といったものである。
言葉が違えば、概念も変わるのが原則。逆に、同じ概念は同じ言葉で表されるのが原則。
F 「と思う」「と感じる」「と考える」は、なるべく使わない
「小論文」、特に「論文型小論文」では、思った「内容」を書くべきで、『思った』と書く必要はない。
『感じる』と『考える』も同様。
ただし、「作文型小論文」では使用可能である。文末の単調さを避けるために適度に使ってもいい。しかし、使いすぎは、逆に幼い印象を与えるので要注意。
G 一段落一義で適切に段落分けする
文は「一文一義」が原則。同じく、段落も「一段落一義」、一つの段落で一つのことを書くのが原則である。特に「論文型小論文」の場合は、この原則を守るほうがよい。
しかし、「作文型小論文」の時は、この原則から離れてもよい。また、論文型小論文でも、200字程度の短い文章の時は、段落分けする余裕がないので、この原則はあてはまらない。
H 他者の文章は正確に引用する
他者の文章は正確に引用しなければならない。引用を行うことで、(a)他者の意見と自分の意見を明確に分け、(b)資料文を忘れることを防ぐことができる。だから、設問で「要約せよ」と指示されない限り、資料文は正確に引用するべきである。
I 他者の文章に対し、文章の内容を越えて、その人の人格に言及してはならない
「文は人なり」という。文章を読むとその人の人柄や、性格などを感じることが出来る。しかし、一片の文章でその人を断定するようなことをしてはならない。
また、他者の意見を論ずるときは、文の内容に限定して論じるのが鉄則である。
3 原稿用紙の使い方
@ 段落の初め(書き出し)は、1マス空ける。
A 1字で1マス。拗音(「ゃ」など)、促音(「っ」)、句読点( 、 。 )なども同じ。ただし、閉じカギカッコ( 」 )と句点( 。 )は同じマスに入れる。
B 行の先頭での約束事
閉じカッコ( 」 』など)や中黒(・)、長音(ー)、拗音、促音、句読点などは、行の先頭に書かない。
前の行の末尾のマスに一緒に入れる。
ただし、字数制限がある場合は例外。最後の行の最後のマスに複数の字や記号を入れると字数オーバーとなるので書けない。
C 疑問符(?)や感嘆符(!)の後ろは1マス空ける。ただし、論文では原則として用いない。
D 点(…)は、1マスに点を3つ入れ、2マス続ける。ダッシュ(―)は、2マス分書く。
E 行の末尾での約束事
開きカッコ( 「 『 など)などは、行の末尾に書かない。
末尾のマスを空け、次の行の先頭に書く。
F 縦書きで、数字を書くときは、漢数字を使って書く。横書きの場合は、算用数字で書く。
G 補足したい時は、( )を使う。
H 書名には、『 』を使う。
I 会話や気持ちを表す場合は一重カギカッコ(「 」)を用いる。
カギカッコの中にもう一組カギカッコを書くときは、二重カギカッコ(『 』)を用いる。
なお、会話文であれば、閉じカギカッコと同じマスに句点( 。)を入れる。それ以外であれば、句点は必要ない。
実際の「小論文」の答案作成で、重要なことは、次の7つ。
@ 時間配分
A 設問の分析
B メモを取る
C 自問自答する
D プロット(=あらすじ・構成)の作成
E 執筆(プロットに従って、文を実際に書き込む)
F 推敲(すいこう) … 執筆の後、見直して修正すること。
1 時間配分を考えよう
時間配分を考えるとき、まず知っておかなければならないことは、自分が原稿用紙を制限字数分を埋めるのに必要な時間である。それをもとに、その他の時間配分を考える。したがって、日頃の練習で、自分が制限字数を書くのに必要な時間を計測しておくべきである。
こうして得られた時間を制限時間から差し引く。受験生は、この残り時間を、@設問の分析、Aプロットの作成、B推敲、の3つに配分することになる。
この中で、なるべく多く時間を取るべきなのは、Aプロットの作成である。なぜなら、プロットをきちっと作っておけば、実際に論文を書き出してから、途中で詰まったり、推敲の際に大幅に修正が必要になったりしないからである。
ちなみに、多くの論文試験で、プロットの作成に、試験時間の半分を費やす人もいる。私の場合は、経験的に試験時間の1/4をあてていた。最低でも、5分以上は必要であろう。
2 設問をじっくり分析しよう
「小論文」の問題を前にしたら、まず最初に、「設問」をじっくり分析することが大切。
@ 「設問」で主張されている内容は何か。
A 「設問」の主張の背景にあるものは何か。
B 「作文」を要求しているのか、「論文」を要求しているのか、を読み取る。
C 『反対意見はないか』や『なぜそう考えるのか』を軸に「設問」を検討する。
D 5W1Hにあてはめて「自問自答」する。
What(何を)、Who(だれが)、 When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どんな方法で)
3 メモを書こう
(1) メモをとる意味
@ メモをとらない小論文に合格答案はない。
A 自問自答の武器になる。自問自答は、メモを取ることから始まり、見ることで深まる。
B メモがあると、文章作成のスピードがアップする。
C メモをとらずに書いた小論文の特徴は、「内容が薄く」、「段落構成があいまい」になる。
(2) 「小論文」を書く時の2種類のメモ
メモの内容は2つ
@発想を書く … 「キーワード」や「解決方法」を箇条書きにする。
A書くことをただ並べる … 順序にこだわらず、思いついたものから箇条書きにする。
メモの役割にも2つある
@自問自答のメモ … 思い浮かんだことをメモする。そのメモを見ながらまた考える。
A理論構成のメモ… 結論、理由、具体例など、書く順序をメモする。
4 「自問自答」する
(1) 「小論文」作成に最も必要なもの、それは「自問自答」
「小論文」作成の鍵は、ほとんどこの「自問自答」が握っている。
「小論文」を書くことは、自問自答によって「自分のテーマ」を見つけ、自問自答によって「書く内容」を広げ深める作業だと考えていい。
(2) 「自問自答」の具体例
「住みやすい町づくり」というテーマが与えられた場合の「自問自答」の具体例を示すと、
次のような展開と「小論文」の骨組み(プロット)ができあがる。
テーマ : 住みやすい町づくり
自分の意見 : ゴミのない町にする
【自問自答の例】
Q.「なぜ」ゴミのない町するのか?
A.汚いといやだから
→ なぜいやなの? → 臭いから
→ 臭くなければいいの? → ハエが増えたり、ばい菌が増えると困る
→ なぜ、ばい菌はいけないの? → 不潔で伝染病のもと
Q.ゴミを出す人がどうしているの?
A.町がよごれても自分には関係ないと思う人が多いから
→ ゴミを平気で捨てる人がいる → ゴミが増える
→ ゴミのある所には平気でゴミを捨てられる → ますますゴミが増える
Q.ゴミが増えたら、町はどうなるの?
A.ゴミを見てもなんとも思わなくなる
→ 不潔と清潔の区別がつかなくなる → 平気でゴミを捨てる人が増える
→ ルールを守るのが馬鹿馬鹿しくなる → 道徳心を失う人が増える
→ ルールを守らない人が増える → 犯罪が増える → 住みにくい町になる
Q.ゴミを誰がなくせばいい?
A.市役所の人がやればいい → 市役所はすぐにしてくれない
→ 自分の家の前がゴミだらけだったら困る
→ 自分の家の前にゴミを捨てられたらハラがたつ
→ じゃどうすればいいの? → 自分の家の前のゴミを拾う
→ ゴミを捨てる人を処罰したらいい → いちいち捕まえられるかな?
→ ゴミを捨てないように教育したらいい? → すぐに効果は出ない
→ 今すぐ出来ることは? → みんなでゴミを拾う運動かな |
このように、メモ用紙の上で自問自答を繰り返していき、ポイントを抜き出す。そうする
と、「小論文」の骨組み(プロット)が出来上がる。
主張 : ゴミのない町を作るべきだ。
理由 : 1.衛生上よくない。
・病原菌の繁殖源になる
2.やがて犯罪が増え、住みにくい町になる。
・ゴミがゴミを増やす。
・ゴミの多さが道徳心を失わせる。
町がきれいにならない理由
・自分には関係ないと思う人が多いから
解決策は次のようなもの
・ゴミを出さない教育を行う。
・ゴミを拾う運動を行い、自分も参加する。 |
5 プロットを作成しよう
「プロット」とは、「あらすじ」あるいは「構成」のこと。小説で言えば、登場人物の設定や事件の流れなどを書いたもの。論文では、章立てや段落構成の計画書を意味する。
(1) プロット作成の段取り
メモを書いて整理することを基本にして、次の順に作業すればスムーズである。
@ 設問に関して、自分の知っていることをキーワードを中心にして、箇条書きに「ことがら」を書き出す。
A 箇条書きの「ことがら」を、根拠、現状、結論など性質別に整理する。
B 展開する順に、「ことがら」に番号を振る。
C 文や内容が深まらないときは、5W1Hをあてはめて、疑問文で考えてみる。
What(何を)、Who(だれが)、 When(いつ)、Where(どこで)、
Why(なぜ)、How(どんな方法で)
D それぞれの段落の分量をバランスを考えて配分する。
(2) プロットの作成で気をつけるべきポイント
@ 段落数
A 字数配分
B トピックセンテンス(その段落の核となる文)
6 執筆時に気をつけること
@ 絶対にプロットを変更しないこと
プロットが決まれば、あとは実際に執筆する。プロットにしたがって、執筆していこう。
このとき注意すべきなのは、「途中で絶対にプロットを変更しないこと」である。執筆がうまくいかないと、ついついプロットを変更したくなる。あるいは、執筆中に別なアイディアが浮かんできて、そちらのほうが良いように思われてくることもよくある。しかし、それらの誘惑は退けて、最初のプロットに従って書くことが重要ポイントになる。
A 下書きはするな
参考書によっては、「下書きを書け」と指導している本もある。しかし、これはお勧めできない。「下書きはしてはいけない」のだ。
なぜなら、下書きを書いてから清書をしようとすることは、1回でいいはずの答案作成を、2回しようとすることだから。ふつうの制限時間では、制限字数2回分の原稿用紙を埋めるのには短すぎる。
下書きを書くことで、プロット作成にかけられる時間は大幅にカットされてしまう。しっかりとしたプロットを書く方が、効率的である。
B 美しくなくてもよいから、とにかく丁寧に
小論文の答案における字は、面接における服装や身なりと同じ。乱暴な字や小さすぎる字はそれだけで、大きなマイナス点になる。
美しい字を書こうとする必要はない。「丁寧にはっきりと読みやすい字で書く」ことを肝に銘じておくこと。
C 鉛筆を使おう
鉛筆で試験に臨むべきである。シャープペンシルは不利である。鉛筆を利用した方が芯の腰が強い。
鉛筆は、力を入れてスピードをあげて文章を書くことができるので、有利である。薄い文字は、採点官に「悪印象」しか与えない。
7 他人の目で冷静に推敲(すいこう)しよう
@ 小論文を書き上げたら、かならず推敲しよう!他人の目になって冷静に。
A 誤字脱字、不適切な表現などを最小限修正する。
B 「修正は最小限にする」が重要。
推敲段階にいたって、プロットを変えるなどの大きな変更は絶対禁止である。
C 推敲のポイント … 起こしやすいミスをチェックする
誤字・脱字はないか … 単純な誤字・脱字がある
表現におかしなものはないか … 主述がねじれている
カッコを閉じ忘れていないか
副詞が呼応していない場面はないか
読点が多すぎたり、少なすぎることはないか
文体が統一されていない場面はないか
表記上の誤りがある場面はないか
用字用語の表記が統一されていない場面はないか
字数制限を守っているか
「原稿用紙の使い方」を守っていない場面はないか など
1 「小論文」問題には、さまざまな「型」がある
出題者が求める「学力」の内容によって、出題のしかたが変化する。
2 作文と論文の違い
(1) 「作文」も「論文」も自己表現の一種
「自分」に関わることをテーマに「自分」を直接表現するか、ある事柄に対しての考え方を通して「自分」を間接的に表現するかの違い。
(2) 作文…「自分」のことを直接書く文章
作文は、自分の経験を中心に、感じたことや考えたことを書く文章である。自分を知ってもらうために、自分を直接に表現するのが特徴。
【試験という観点から見た「作文」の特徴】
自分の経験を中心に構成される。
人柄や感性を評価するのに適している。
論理的整合性より話の内容の方が重視される。
ある程度の文学的表現も許される。
ある程度の主観的判断も許される。
(3) 論文…「自分」のことを直接書かない文章
論文は、ある論点・意見に対して、自分の判断を下し、その判断がなぜ正しいのかを根拠を挙げて述べる文章である。
論文は、客観的である必要がある。そのため、主観的な文章(〜が好き、〜が嫌い、〜を信じる等)は書くべきではない。
また、論文は、一定の手続きに従って書く必要がある(「引用」「判断」「根拠」)。この手続き自体には個性は反映されない。しかし、どのような内容の「引用」「判断」「根拠」を展開するかで、その人の個性が発揮される。
【試験という観点から見た「論文」の特徴】
社会的事象を中心に構成される。
論理的思考力や知識量などを評価するのに適している。
話の内容よりも論理的思考力・表現力が重視される。
文学的表現は嫌われる。
客観的判断が最優先、根拠を持たない主観的判断は許されない。
3 内容から見た「小論文」問題の「型」とその評価観点
入試の課題は、求められる「答案」の内容から分類すると、「作文型小論文」と「論文型小論文」の2種類が主流といえる。しかし、他の型も多数存在する。
(1) 作文型小論文(入試・就職)
本来の意味での「作文」を書く試験問題。主に受験生の人柄や性格を見るのに使われる。
入学試験における推薦入試の問題や、人柄的な入学適性を見る問題。志望動機を問う問題や熱意を測る問題に多く使われ、受験生の人間性を見るために使われることが多い。
【評価の観点】 人柄
性格
態度
熱意
基本的な読み書き能力
人生観・発想力 など
(2) 論文型小論文(入試・就職)
本来の意味での「論文」を書く試験問題。受験生の論理的記述力を見る目的で使われ、文字通り「論文」を書かなければならない。幅広い知識と正確な文章表現を要求される。
【評価の観点】 資料文や図表の読みとり能力
論理的思考力
社会常識
時事問題に対する感受性
論理的な文章を書く能力
自分の意見を構築する能力 など
(3) 随筆型小論文(大学入試に多い)
「作文型小論文」と「論文型小論文」の中間に位置する小論文。個人的な経験と社会的事実を関連づけて述べる小論文で、大学の試験などにこの種の論文が多い。論理的記述力に加え、文学的な発想も必要とされるため、ある意味では最も難しい問題。
【評価の観点】 資料文や図表の読みとり能力
資料文や社会的事象から問題を発見する能力
社会常識
時事問題に対する感受性
ある程度文学的で抽象的な文章を書く能力
自分の経験を社会的事象と結びつける能力
読者を引きつける構成力 など
(4) 創作型小論文(大学入試・大学卒の就職試験)
与えられた課題(文章・写真・絵など)に関して、小説や、戯曲、キャッチコピーなどを作成する問題。
おもに発想力を見るのに使われる。広告業界やマスコミなど独創的な発想が要求される部署の就職試験や、芸術系の大学などで出題される。
【評価の観点】 柔軟な思考力
ユニークな発想力
文学的文章力
企画力 など
(5) その他の小論文
@ 現代文型(入試)
「小論文」とは名ばかりの、どちらかといえば「現代文」の問題に近い問題。漢字の読み書きや空所補充、要約、表題付けなど、まとまった分量の文章を書かせる問題ではない。受験生は「小論文」の問題と考えるよりも、「現代文」の問題を解くと思った方がよい。
A 理系教科型(入試)
「現代文型」と同様、「小論文」とは名ばかりの問題。受験生は「小論文」の問題を解く、と考えるよりも「理科」あるいは「数学」の問題を解くと思った方がよい。
B 総合問題型(入試)
小論文を書くのに、その領域の専門知識がないと論述できないような問題。まず、その専門知識に関する普通の問題を解いて、その答えを元に論述する形の問題である。
4 形式から見た「小論文」問題の「型」とその対策
「小論文」の問題は、出題される問題の形式によっても分類できる。
出題形式の違いによって、求められている「答案のタイプ」は微妙に異なるので、その場で慎重に対応する必要がある。
(1) テーマ型
「私の愛読書」「眼」「脳死について思うところを書け」など、書くべきテーマだけが与えられて、それについて自由に論ずる問題。以前は入学試験、就職試験双方ともこのタイプの小論文が多かった。
しかし、書くべき内容が限定できず、あまりにも難しいため、最近は減少傾向にある。
【必要とされる訓練】
作文型小論文の場合は、基本の型をマスターした上で過去問の形式にあわせた訓練をする。
論文型小論文の場合は、社会的知識をたくわえ、基本の型にそって書く訓練をする。その後、過去問の形式に沿って実戦的な訓練をする。
(2) 資料読みとり型
設問として資料文が提示され、それについて論ぜよ。と要求される問題。最近の入学試験ではこちらが主流。考える素材があらかじめ与えられているのでテーマ型よりは比較的容易に書くことができる。ただし、資料文の内容を的確に把握し、それに基づいて自分の主張を組み立てなければならないので、「書く」より前に「読む」能力が必要。
【必要とされる訓練】
読解力を高めるために、視写や要約の作成をする。
作文型小論文の場合は、基本の型をマスターした上で過去問に形式にあわせた訓練をする。
論文型小論文の場合は、資料文を注意深く読み、基本の型にそって書く訓練をする。その後、過去問の形式に沿って実戦的な訓練をする。
(3) 図表読みとり型
資料文と一緒に、あるいは単独で図表を提示し、そこから読みとれることをもとにして書かせる問題。図表の読みとり能力が問われる。おもに入学試験で出題される。図表が示している事実を読みとれれば、あとは、資料読みとり型と同じようにして書けばいいので、資料読みとり型の特殊なパターンとして訓練すればよい。
【必要とされる訓練】
図表が主張していることを読みとるために、図表の説明文や、問題点のリストなどを作成する。
論文型小論文の場合は、「引用」部分に図表から読みとったことを書き、基本の型にそって書く訓練をする。その後、過去問の形式に沿って実戦的な訓練をする。
(4) 写真・ビジュアル読みとり型
写真や絵画など、ビジュアルに訴えるものを見せ、それについて、考えたことや感じたことを書かせる問題。おもに入学試験で出題される。ビジュアル的に提示されたものを、いかに言語化するかがポイント。いったん読みとったことを言語化できれば、あとは資料読みとり型と同じように書けばよい。
【必要とされる訓練】
写真や図版から読みとれることを言葉にするために、写真の説明文や、そこから想像したストーリーなどを書いてみる。
論文型小論文の場合は、「引用」部分に写真などから読みとったことを書き、あとは基本の型にそって書く訓練をする。その後、過去問の形式に沿って実戦的な訓練をする。
(5) 複数資料読みとり型
資料文と図表、あるいは対立する意見を含む複数の資料文が与えられ、それについて論述する問題。
おもに入学試験で出題される。資料間の意見の対立点を整理し、それについて自分の意見を述べてゆく。
資料読みとり型の変形。まず、資料読みとり型をマスターし、その上で資料間の意見の対立点を整理する訓練をすると良い。
【必要とされる訓練】
複数の資料から問題を読みとり、共通点、対立点などを整理する。さらにそれを文章と表の両方で表現してみる。
論文型小論文の場合は、「引用」部分に読みとった問題点を書き、あとは基本の型にそって書く訓練をする。その後、過去問の形式に沿って実戦的な訓練をする。
(6) 英文読みとり型
資料文が英文で提示される問題。入学試験に多い。日本語の記述力とともに英語の読解力を評価しようとする問題だが、小論文の書き方としては、資料読みとり型と同じなので、受験生は英語力を高める以外、「小論文」の勉強としては特に新たに勉強する必要はない。
【必要とされる訓練】
英文の読解能力を上げる。
論文型小論文の場合は、「引用」部分に読みとった問題点を書き、あとは基本の型にそって書く訓練をする。その後、過去問の形式に沿って実戦的な訓練をする。資料文が英文になっただけであり、小論文の書き方としては日本語のときとまったく同じである。
1 作文型小論文で「何を」書いたらよいか?
典型的な問題は、「この学校・学科を志望した理由を書け」である。
このような「作文型小論文」において、書くべきことは、次の2つのことになる。
過去の自分(=いままで何をしてきたか)
未来の自分(=これから何をしたいか) を述べるのがポイント。
(1) 「過去の自分」として書くべきことは、次の「過去の経験」である。
@ 今までしてきたことの中で、
A なるべく新しい、
B 自分の内面を変えた出来事。
(2) そして「未来の自分」として書くべきことは、次の「未来の計画」である。
@ 「過去の自分」をふまえた、
A 自分の将来の「夢」に通ずる、
B 志望先での具体的な計画。
ここで大切なのは、「過去の自分と」と「未来の自分」が、連続性を持っていなければならないということである。
「作文型小論文」における最大の難関は、この「過去の自分」と「未来の自分」をつかむこと(=「自己分析」)である。
ここでいう「自己分析」とは、言葉で自分を具体的に説明できるようにすること。「今まで自分は何をしてきたのか?」「これから自分は何がしたいのか?」と自分のことを明らかにしていく。
そして当然のことながら、これらの問いに、全員共通の正解などはない。すべての答えは君の内側にある。また、その答えは、一人一人違ったものであるはずである。
2 作文型小論文を「どう」書いたらよいか?
〜「過去の自分」中心型〜
(1) 段落構成
第1段 「過去の自分」の経験を端的に答える
第2段 その経験の詳しい説明(=どんな経験だったか)
第3段 経験の分析(=その経験がどのように自分を変え、今の自分にどのように影響を与えているか)
第4段 まとめ(「未来の自分」像と絡めてさりげなく決意表明)
(2) 「『過去の自分』中心型」作文型小論文での注意事項
「過去の自分」中心型の作文型小論文は、以下の3点に気をつけて書くこと。
@ 具体的に経験を述べること
「過去の自分」中心の作文型小論文の命は、具体的な経験である。与えられたテーマに関して、今まで自分が経験したことの中で、一番自分の内面を変えた経験を書こう。
A 経験をポジティブ(前向き)に分析すること
「過去の経験」がきちんと分析できているかどうか重要である。
いくら変わった経験を書いても、またいくら具体的に経験を書いても、その経験が自分にとって何だったのかを分析できない人の答案は高く評価されない。
なおかつ、「自分を売り込む」という小論文の性質上、その分析はポジティブ(前向き)なものでなければならない。
自分がポジティブに経験を分析できることをアピールするためには、第2段の「経験の詳しい紹介」の部分にマイナス要素を入れておくこと、そして、それを第3段でプラスに転換するテクニックが有効である。
B 自分の「最高の失敗」を思い出しておく
@とAの解説でわかるように、よい「過去の自分」中心の作文型小論文を書くためには、「具体的に思い出すことができ」「学ぶところが多い」「自分を内面から変えた」「最高の失敗」を思い出しておく必要がある。
「あなたの今までの人生で最高の失敗はなんですか?」と聞かれて、君はどんな「最高の失敗」を挙げるだろうか。「自分を成長させてくれた最高の失敗」を思い出しておこう。
3 作文型小論文を「どう」書いたらよいか?
〜「未来の自分」中心型〜
(1) 段落構成
第1段 「夢」の宣言(=「未来の自分」を端的に答える)
第2段 その「夢」を抱いたいきさつを述べる。(=「過去の自分」)
第3段 「目標」の現状と問題点、達成するための具体的方法(=「未来の自分」)
第4段 まとめ(=「課題」の決定とそれを達成する決意表明)
(2) 「『未来の自分』中心型」作文型小論文での注意事項
「未来の自分」中心の「作文型小論文」を書くときのポイントは、「夢」「目標」「課題」を段階的にはっきりと把握しているかということ。
@ 「夢」とは?
「夢」とは「自分が一生をかけても到達できるかわからないくらい遠くにある目標」のことである。
その意味では、中学生がよく書く「弁護士になりたい」「医者になりたい」という「職業や資格」は「夢」ではない。なぜなら、それらは「夢」のための一手段でしかないからである。その「資格」を得たとたんに「夢」がなくなる。まして、「高校に入学する」ことなどは「夢」というには近すぎる。
これらを「夢」にするには、「○○をする弁護士になりたい」「○○をする医者になりたい」という「○○をする」の部分を加えると、それは「夢」になる。
たとえば、上記の「夢」を「社会的弱者の立場を代弁する弁護士になりたい」とか「患者から信頼され命を任される医者になりたい」とするだけで、「一生をかけても到達できるかわからない位遠くにある目標」になる。もちろん、「○○する◎◎になりたい」という「夢」の形でなくてもよい。「○○がしたい」という具体的な行動の形であってもよい。
A 「目標」とは?
「小論文」で書く「目標」というのは、「『夢』に向かう上で、近い将来かならず克服しなければならない課題」のことである。
しかし、ここでも「そのためには弁護士にならねばならない」や「そのためには医者にならねばならない」は、「目標」にはならない。「職業や資格」につくことは、その一手段であり方法だからである。
ここでは「夢」のところで付け加えた「○○をする」「○○される」の部分を達成するための「目標」を掲げなければならない。たとえば、「社会的弱者を代弁する法律的な知識をもつ」ことを「目標」とするべきである。そこで、自分の「目標の現状」や「問題点」を指摘できると深みが出る。とにかく、その資格を取ることよりも「○○をする」という「夢」実現のための「目標」を立てる。
B 「課題」とは?
「作文型小論文」で書くべき「課題」とは、「○○をする」『夢』や『目標』に到達するために「今すぐに始めなければならないこと」あるいは、「今すでにしている行動」である。
「資格」や「職業」につくことが、「目標」達成手段である場合は、ここでいう「課題」となる。
「資格」や「力」を得るための「具体的な行動」を明確にするべきである。
志望している学校や会社で、まず自分がするべきことが含まれる場合が多くなる。
「課題」を決定するときには「今すぐに始めなければならないこと」そして「今すでにやっていること」を挙げることが重要である。
「未来の自分」中心型の小論文の場合、「遠くの大きな目標に向かって近くの小さな一歩が踏み出せているか」が評価のポイントになる。その意味でも、自分自身の「夢」「目標」「課題」をしっかり把握することが大事なのである。
1 「論文型小論文」で「何を」書いたらよいか?
「論文型小論文」では、引用されたある意見に対して自分の判断を下し、その判断がなぜ正しいのかを根拠を挙げて述べることが求められる。その場合、必要に応じて「問題提起」と「まとめ or 提案」を付け加えると「小論文」になる。
基本構成は、「引用」→「問題提起」→「判断(結論)」→「根拠」→「まとめor提案」 |
(1) 「引用」「判断」「根拠」で自分の論を組み立てよう
@ 「引用」…「与えられている事実・意見」を「引用」する
「与えられている事実・意見」とは、「資料読みとり型」の試験の場合は、「資料文で筆者の行った主張」ということになる。また、「テーマ型」の場合は、「社会的文脈」(みんなが知っている事実や意見)となる。
この引用部分を元に「自分の意見」を作る。そもそも、「自分の意見」というものは「与えられている事実・意見」との関係の上に成り立っているものである。
A 「問題提起」…自分の意見の前に「問題提起」をする
「問題提起」をする目的は、自分が何についてこれから判断を下すのかを宣言することである。
「はたしてこの筆者の主張は妥当なものであろうか」や「果たしてこのような方法で事態の改善は図れるか」といった具合にする。
このときのポイントは、この後に来る自分の「判断(=自分の意見)」ときちんと対応するように問題提起をしておくことである。その意味で、「問題提起」は「判断」と同時か、あるいは後で考えても良い。
しかし、「問題提起」は必ずしもしなければいけないものではない。なぜなら、「問題提起」が含まれている設問が多いからである。その問題の場合は、独自の「問題提起」をする必要はない。
与えられた問題提起をそのまま書き、それに対して「判断」を下せばよい。
つまり、「小論文」でいう「問題提起」とは、設問に「問題提起」が含まれていない場合に、自分が何を論ずるかを限定するために、「判断」と一緒に行うものである。
B 「判断」…自分が最も言いたいこと(結論)
「判断」において君がするべきことは、思考を柔軟にして様々な角度から「与えられた意見」を分析し、それをもとにして、「自分の意見」を構築することである。
たとえば、以下のような「与えられた意見」に対して、君はどのように「判断」を下すだろうか?
「与えられた意見」:「インターネット上の『殺人サイト』は、国によってもっと規制されるべきである。」 |
この意見に対して下せる「判断」のパターンが、次のように考えられる。
パターン1:「全肯定」→「補足」
「その通りである。さらに国家の安定を脅かすような反体制的なサイトも規制するべきである」
パターン2:「全否定」→「代案提示」
「全面的に反対である。たとえ、どんなに危険なサイトであろうとも、国によって規制されるべきではない。インターネット使用者のモラルに任せるべきだ」
パターン3:「部分否定」→「修正案提示」
「たしかに、あまりにもひどいサイトは取り締まられるべきであろう。しかし、国によって一方的に取り締まられるべきではない。できれば、インターネットに参加する人々によって構成される特別機関により、取り締まられるべきサイトが決定され、その勧告にしたがって国が取りしまる方法が理想である」
パターン4:「前提否定」→「新前提提示」
このようなことを問題とすること自体がおかしい。インターネット上のサイトを「国が取り締まる」ことなど、技術的にいって不可能である。
どうだろうか? 君は他にどのような「判断」を思いついただろうか?
どのような「判断」にせよ、「判断」を下すときのポイントは、「与えられた事実・意見」をなぞるだけでない、自分独自の考えを示すということである。
上記のパターンには、すべて、前提となった「与えられた意見」にはない、独自の「自分の意見」が付け加わっている。「全肯定」の意見でさえ、そのあとに、新たな論点を「補足」している。
論文というのは、「自分の意見」を他人に認めさせるために書く文章である。だから、そこには、「今までにない」何らかの新しい情報が含まれていなければならない。つまり、論文型小論文における「判断」の基本は、与えられた意見にとりあえず「NO」を言おうとすること、そして、その過程で新しい「自分の意見」を発見しようとすることである。
C 「根拠」…「証拠」=「客観的な事実」を示すこと
自分の結論が正しいと主張するためには、「なぜ相手が間違っているのか」「なぜ自分の意見が正しいのか」の2点に絞って、「証拠」を挙げる必要がある。「証拠」とは、「客観的な事実」のことである。
「自分の意見」の正当性を証明する「根拠」を挙げる方法には、大きく分けて以下の2つの方法がある。
a 「反例」を挙げる。(「相手の意見」の非正当性を指摘する)
「自分の意見」の正当性を証明するための方法として、「他者の意見」のもつ問題点を指摘することによって、結果として「自分の意見」の方が正しいのだ、と主張する方法である。
「相手の意見」の非正当性を指摘する「根拠」のことを「反例」という。「反例」を挙げることによって、「相手の意見」は否定され、「自分の意見」の正当性が間接的に証明される。
b 「証例」を挙げる。(「自分の意見」の正当性を指摘する)
「自分の意見」の正当性を証明するためのもう一つの方法は、「自分の意見」の正当性を指摘するという方法である。つまり、「自分の意見」を支える有力な根拠を挙げて、結果として「相手の意見」よりも「自分の意見」の方が正しいのだ、と主張する方法である。
「自分の意見」の正当性を指摘する「根拠」のことを「証例」という。「証例」を挙げることによって、直接的に「自分の意見」の正当性が証明される。
当然のことながら、「反例」と「証例」は、どちらか一方しか使えないわけではない。一度にその両方を使うこともできる。
「根拠」として一番説得力があるのは、「具体的な社会的事実」である。「社会的事実」は、読者によっても検証可能な事実のことを言う。また、自分の経験も「社会的事実」になることがある。
「根拠」において書くべきことは、
「相手の意見」の問題点を明らかにし、
「自分の意見」の正当性を保証する、
具体的な「社会的事実」である。
(2) 「まとめ or 提案」… 自分の主張を再確認するか、代替案を提案するか
「引用」「判断」「根拠」で自分の主張を展開したら、最後にもう一度自分の判断を繰り返し、自分の主張を再確認するか、相手の意見の問題を指摘した後の代替案を提案するかを決めよう。つまり、「引用」「判断」「根拠」の三要素に加え、最後に「まとめ
or 提案」を付け加えるのだ。
これは、「小論文」として形式を整えるためのもので、「論文」本来の性格からいえば不必要なものである。しかし、「まとめ」を最後に書くことにより、小論文が形式的に整い、小論文全体に統一感が生まれる。また、自分が一番主張したいことを再度強調して読者に提示することができるので、その「小論文」で何を主張したかったのか読者と自分自身にはっきりと印象づけることができる。
「まとめ」は、特に新しいことを書く必要はない。「判断」の再確認を「判断」とは別な表現で書いておけばよい。
また、ものごとに否定的な「判断」を下した場合は、最後に「提案」をする必要がある。
2 論文型小論文を「どう」書いたらよいか? 〜テーマ型〜
(1) 「テーマ型」では、問題意識が問われる
テーマ型小論文では、日頃の問題意識が問われる。正確な幅広い知識で、的確に社会的文脈を押さえよう。
「テーマ型小論文」では、テーマだけが与えられているので、自分の知識の中から社会的文脈(みんなが知っている事実・意見)を引用し、そこから論ずる問題を限定して自分の意見を述べていかなければならない。その意味で「資料読みとり型」よりも難しいと言える。
(2) 標準的な「テーマ型小論文」の構成
第1段 「社会的文脈」の「引用」
第2段 (「問題提起」)+「判断」
第3段 「根拠」
第4段 まとめ(「判断」の反復or「提案」)
(3) 「テーマ型」小論文での注意事項
「テーマ型」小論文の場合は、以下の2点に気をつける必要がある。
@ 社会的文脈は後ろの展開にあわせて引用する。分量と「鮮度」にも気をつける。
テーマ型小論文の悪い例でよく見られるのが、社会的文脈(みんなが知っている事実や意見)だけを延々と書いて、最後に「われわれはこれらのことを深く考えなければならない」と書いて終わり、という答案である。
「引用」部分の社会的文脈は、資料読みとり型小論文における引用された資料文と同じ働きをする。つまり、自分の意見を展開しようとする前提となる部分である。
社会的文脈は、後ろの展開にあわせて引用されなければならない。社会的文脈を引用するときは、自分はそれを元にどういうことを主張するつもりなのか、を考えながら引用することが重要ポイントである。
当然、引用に費やす分量にも注意する必要がある。制限字数600字ならば、100字前後、全体の6分の1から5分の1に押さえるのが基本である。
また、引用する社会的文脈の「鮮度」にも気をつける必要がある。テーマ型小論文は、君がどの程度社会的な出来事に興味関心を持ち、考えているかを測る問題でもあるのだ。あまりに古い例や、いつの時代にも通用してしまう普遍的内容を引用したのでは君の情報に対するアンテナの感度を疑われる。「ネタはなるべく鮮度の良いものを」と覚えておこう。
A 問題提起は設問に従って行う。とくに何も要求されていないときは自分で論述する範囲を限定すること。
設問にすでに問題提起が含まれている場合は、その問題提起に従わなければならない。
また、とくに問題提起が指定されていない場合は、自分で論述する範囲を限定し、それについて判断を下すようにした方がよい。
3 論文型小論文を「どう」書いたらよいか? 〜資料読みとり型〜
(1) 「資料読みとり型」は、「小論文」入試の主流派
資料を疑いながら読むことで、資料文の主張をきちんと把握しよう!
「資料読みとり型小論文」では、あらかじめ資料が与えられ、それについて自分の考えを述べることになる。自分の意見を述べる以前に、資料文(英文や図表も含む)の読解力が試されるので、慎重に資料文を疑いながら読み、資料文の主張を読みとった上で、自分の意見を構築する必要がある。
(2) 標準的な「資料読みとり型小論文」の構成
第1段 資料文からの「引用」
第2段 「問題提起」+「判断」
第3段 「根拠」
第4段 「まとめ」(「判断」の反復+「提案」)
(3) 「資料読み取り型」小論文での注意事項
「資料読みとり型」の小論文を書くときには、以下の3点に気をつけよう。
@ 資料文の読みとりをしっかり行う。疑いながら読み、問題提起できそうな部分を探す。
「つっこみ」を入れながら、資料文を読むことで、自分自身の判断を生み出すことができる。
また、同じことは、図表や写真などに対しても言える。図表や写真も、資料文と同じく何ごとかを主張している。その主張を注意深く読みとり、答案の最初に引用するようにすることがポイントになる。
A 資料文を正確に「引用」する(「要約」は要求されない限りしない)。
資料文はなるべくカギカッコ付きでそのまま「引用」すること。「要約」は、相手の主張をねじ曲げたり、論点を曖昧にしてしまうおそれがあるため、設問で要求されない限りしてはいけない。
また、「引用」するのだから、資料文は一字たりとも変えてはいけない。問題となりそうな部分をそのまま正確に写すことが大事。
もし、引用したい部分が長すぎる場合は、「中略」を使う。「我々がに日常接する死は劇化され、着色された死である。(中略)劇化された死には、現実の死が持つ厳しさや重さがない」などのように使う。そのとき、たとえ「中略」を使っても、その部分で何を言っているのかを、わかるようにすることがポイント。
B 「判断」には、「たしかに〜、しかし〜」パターンを使うとよい(このパターンに固執しすぎるのもよくない)。
多くの場合、「資料読みとり型」の小論文で出題される資料文の主張は、全体としては納得できるようになっている。
このように大きな主張には賛成できるが、一部認められない点や気をつける点もある、という判断は「部分否定」の判断になる。そして、この「部分否定」を端的に表せるのが、「たしかに〜、しかし〜」パターンである。
「たしかに〜、しかし〜」パターンの良い点は、思考のバランスの良さを試験官にアピールすることができるところである。つまり、相手の主張に理解を示す柔軟さを示しつつ、それにとりこまれない独自性も示すことができる手法である。
4 論文型小論文の型で大事なこと
論文型小論文の基本の型は、すべて「引用」→「判断」→「根拠」→「まとめ or 提案」の順番で構成されている。
しかし実際、小論文の構成を考えるときは、この4つのステップは、君の頭の中で同時に進む。
つまり、「引用」→「問題提起」→「判断」→「根拠」→「まとめ or 提案」と順番に考えて、論文を組み立てていくのではなく、設問を読んで思いついたところをメモし、関連するキーワードを記憶から引き出す。その後で、書く順を考えるのだ。
だから、設問に取りかかるときは、この「引用」→「問題提起」→「判断」→「根拠」→「まとめ or提案」の順序にこだわることはない。プロット段階で考えよう。
与えられた設問に関して柔軟に思考し、自分の内側にどのような素材(知識や経験)があるかをよく考えると対応できることが多い。そして、「引用」「判断」「根拠」「提案」のどこからでも、縦横無尽に論文の構成を考えられるようになろう。
(「不安」を取り除くことができるのは、君の実践練習しかない。君の健闘を祈る。)
