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試験問題「社長として決断しよう・利潤の分配をどうする」HEADLINE

【観点】
  • 主体的に学ぶ態度

【問題】
2019年実施
 次の課題文をよく読んで、あなたの考えることを作文にしなさい。
 あなたはケーキを製造販売するケーキ@株式会社の社長(経営者)です。ケーキの販売はライバル会社との競争もありますが、売り上げは少しずつ伸びています。特に今年は、従業員のアイデアをもとに開発したオリジナルなケーキが好評で、ヒット商品になりました。そのおかげで、今年の売り上げは年間2億円になりました。諸経費を差し引いたあとの利潤は2,000万円です。
 そして、年度末になり、あなたは経営者として、利潤の配分をする必要に迫られています。
 あなたなら、この利潤をどのように配分しますか。配分を検討する項目は、次のA~Fの6つです。全部の項目に配分する必要はありません。全く配分しない項目があってもかまいません。
 利潤を配分する項目と金額を決めて、項目と金額を決めた理由を説明してください。ただし、利潤の配分を決める際には、下の「注意すべき点」をふまえて考えてください。
 なお、解答用紙の「利潤の配分表」に配分する金額を書き入れなさい。配分しない項目があれば、その項目の金額欄には「0」を入れなさい。作文は主に、配分すると決めた項目を選択した理由を中心に書きなさい。




【利潤の配分を検討する項目】
A 店舗の新設 … 1店舗を新設するのに1,000万円の費用が必要です。
B 新商品の開発 … 1商品を開発研究するのに500万円の費用が必要です。
C 従業員の賃金の増額 … 正社員10人と契約社員10人の従業員がいます。3店舗あわせて合計20人です。
D 株主への利益配当 … いつもは1株あたり15円の利益配当をしています。
E 子ども向けのケーキ教室の開催 … 1回開催するのに10万円必要です。地域への社会貢献として実施します。
F 翌年への積み立て … 予想外の損害などに備えます。

【利潤を配分するときに、注意すべき点】
①「効率」(利潤を無駄なく活用すること)の観点をふまえていること。
②「公正」(不当に不利益を受ける人がいないこと)の観点をふまえていること。




【解答・採点基準】
次の各論点について、社会の現状や友だちの意見に対して、効率と公正の2観点から検討し、自分の意見を説明する文章を書くことができている場合に、各々2点を加点する(満点は10点)。矛盾する記述は、0点。
① 利潤の配分金額の合計が2000万円になっていること。
② 利益配分を受ける主体は、会社・株主・従業員の3者である。利潤の効率的な配分と、3者が公平に利益を得ることを 同時に考えるべきである。
③ 店舗の新設、新商品の開発、ケーキ教室の開催、翌年への積み立ては、いずれも会社の維持と発展のための投資であり、会社経営の効率の観点から優先される内容である。会社が維持・発展しなければ株主や従業員の利益も生まれない。しかし、公正の観点からは、株主への配当や従業員の賃金を低いままにして、会社の利益だけを優先することは不公正である。
④ 利潤がある場合、株主には配当を受ける権利があり、社長は株主総会で利潤の配分方法を説明する責任を負っている。
⑤ 社会貢献をしつつ会社の維持と発展のために資金を確保する、利益配当を増額し株主の投資への意欲を増やす、賃金の増額で従業員のやる気を高める、効率と公正を満たすよう全体のバランスを検討している。例えば、4:3:3の配分など。
⑥ 経営上無理のない配当の増額は、株主の投資意欲をよび、より大きな資金を将来に得るための効率的な方法である。他方で、がんばって会社の利潤を生み出している従業員が得るべき報酬との公正さをどのように実現するかが課題になる。
⑦ 従業員の賃金の増額を検討する場合は、正社員と契約社員の賃金格差をどのように扱うのかが課題になる。会社の維持や発展は、従業員の努力や仕事内容に支えられていることは効率的な観点である。さらに、契約社員の賃金が低く設定されているのも企業側の効率的な理由からである。しかし、正社員と契約社員が同じ仕事内容なら同一賃金が公正である。
⑧ ケーキ教室の開催は、地域貢献として企業の社会的役割を果たす意味もあるが、企業イメージの向上につながるPRにもなる利潤の効率的な活用方法である。また、消費者にも有益な教育機会であり利潤の公正な活用方法だとも考えられる。



【子どもたちの答案・作文 授業で使用した教材など】
子どもたちの答案「作文」の代表作品



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